【Honey・Honey】




ゴールデンウイークの代わりに、獲得した連休。
たったの三日だけど…
息抜きの為に旅行へ旅だった。



「海、綺麗ですね!!」
「東京では見れないな…」

石川が呟くように、東京では決して見る事の出来ない、エメラルドグリーンの海が目前に広がっていた−
しばし、海に見とれている石川を優しく見下ろして岩瀬は微笑む…

『喜んでくれて良かった…』

突然決めた旅行は移動距離が長い為、疲れている石川にとってキツイものがあっただろう…
でも、どうしても石川にこの海を見せたかった。

この綺麗な海を…
悠さんの故郷の海とは、また違う。
でも、懐かしさとかを感じて欲しい―
日常の殺伐とした空気じゃなく、このゆっくりと流れる優しい時間を共に。

そんな岩瀬の思いを感じたのか、石川は柔らかく微笑んで―

「ありがとう、基寿…」
「お礼なんて…」
「だって。俺の体を…心を気遣ってくれたんだろう?」
「悠さん…」
「だから、ありがとう。」
「・・・・・・・」

岩瀬がなんと言って言いか解らず、言いあぐねていると…
笑顔の石川がゆっくりと近づいてきて―

羽根が触れるような口付けを。

触れる前と同じ様に、ゆっくりと離れていく石川をマジマジと見つめると、石川の輝くばかりの笑顔に出会う…

「お礼。」
「…悠さん…」

瞬きもせずに見つめ続ける岩瀬に、ゆっくりと手を伸ばし。
そして指を絡める…

「…俺よりも基寿の方が疲れるのに…何時も気遣ってくれてありがとう。」
「…そんなっ…悠さんのほうが気遣ってくれてますよ!」
「そうかな…」
「はい!俺は悠さんが笑ってくれるだけで癒されるんですから!!」

力いっぱい、力説する岩瀬に笑って。
優しい恋人の手を引いて、波打ち際へと歩き出す―

「まだ、水は冷たいかな?足だけでも浸からないか?」
「…はい…」
「あー。失敗したな…」
「えっ?」
「ん…水着…持って来ればよかった…」

サラリと爆弾発言をする石川に岩瀬は眼を見開き。
そして猛然と抗議する―


「水着は禁止です!!!!」



余りにも強固に言い張った為。
石川の機嫌を損ねた岩瀬は一晩掛けて機嫌をとることになる…

でも、そんな事も岩瀬にしてみれば嬉しい出来事で。


旅行先でも。
仕事場でも。
二人の関係は変わることなく。

これからも。
何処へ行っても。
ずっとこのままで。

何年先でも、ずっと―




2007.06.01 UP